現代語訳

 世間の営みを見ると、ある晴れた春の日に雪だるまを作り、金銀パールで飾って、安置する堂を建てるようなものだ。堂の完成を待って、無事に安置できるだろうか。今、生きていると思っても、足下から溶ける雪のような命である。それでも、人は努力が報われることを期待しているようだ。

原文

 人間の、いとなへるわざを見るに、春の日に雪仏ゆきほとけを作りて、そのために金銀・珠玉の飾りをいとなみ、堂を建てんとするに似たり。そのかまへを待ちて、よく安置あんちしてんや。人の命ありと見るほども、したより消ゆること雪の如くなるうちに、いとなつことはなはだ多し。